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免疫療法は誰に向いているのか?効く人・効かない人

  • 執筆者の写真: 院長 永井 恒志
    院長 永井 恒志
  • 4月15日
  • 読了時間: 5分

更新日:4月15日



免疫治療は、がん治療の“第4の柱”として注目され、これまで治療が難しかった患者さんに新しい希望を与える選択肢となっています。しかし、残念ながらすべての患者さんに等しく効果が現れるわけではありません。


実際には、「免疫治療が効きやすい人」と「そうでない人」が存在します。


では、どのような患者さんが免疫治療に向いているのでしょうか?今回は、がんの種類や体の状態、遺伝的背景など、多角的な視点から“適応の見極め方”を丁寧に解説します。



■執筆者
銀座鳳凰クリニック院長
永井 恒志
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。

 






免疫治療が「向いている」人の4つの特徴



① 免疫が働きやすい「ホットな腫瘍(hot tumor)」を持つ人


がんには、免疫細胞がよく入り込んで活性化している“免疫が熱い”タイプ(hot tumor)と、ほとんど免疫が存在しない“冷たい”タイプ(cold tumor)があります。


一般的に、免疫チェックポイント阻害剤が効果を示しやすいのは、hot tumorのがん種です。


以下がhot tumorのがん種に当たります:

  • 悪性黒色腫(メラノーマ)

  • 非小細胞肺がん

  • 腎細胞がん

  • 膀胱がん

  • MSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性)大腸がん


これらはすでに保険適用されており、奏効率も比較的高い傾向があります。



② PD-L1の発現が高いがんを持つ人


がん細胞がPD-L1というタンパク質を多く発現していると、免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)が効果を示しやすいことが知られています。


たとえば、PD-L1が50%以上陽性の非小細胞肺がんでは、免疫治療単独でも化学療法以上の効果が出ることがあります(KEYNOTE-024試験)。


治療前にPD-L1検査を行うことで、ある程度の“効きやすさ”を予測できるようになっています。



③ 全身状態が良好で、免疫が元気に働ける人


免疫治療は、「患者自身の免疫細胞が主役」になるため、白血球やリンパ球の数・質が良好であることが重要です。


以下のような条件が好まれます:

  • パフォーマンスステータス(PS)が0〜1

  • 栄養状態が良好(アルブミン、プレアルブミンが正常範囲)

  • 炎症マーカー(CRP、LDHなど)が安定している

  • 重度の自己免疫疾患がない


副作用のリスクも踏まえて、体力と免疫力を備えた患者さんに適している治療と言えます。



④ 治療に「時間的余裕」がある人


免疫治療は効果が出るまでに数週間〜数ヶ月かかることが多いため、即時に腫瘍を小さくしなければ命に関わるようなケース(緊急の圧迫、出血など)では適応が難しい場合があります。


そのため、再発予防、維持療法、初期進行がんなど“時間的猶予”がある場面で効果を発揮しやすいのです。



逆に“向いていない”ケースとは?


以下のような条件では、免疫治療の効果が出にくかったり、副作用のリスクが高まる可能性があります:

  • 強いステロイドや免疫抑制剤を使用中

  • 活動性の自己免疫疾患(リウマチ、潰瘍性大腸炎など)がある

  • 脳転移や多臓器不全などで緊急の対応が必要な状態

  • 栄養状態が著しく悪く、T細胞の活性が得られない

  • 低免疫腫瘍(cold tumor)でT細胞が腫瘍内に入れない


ただし、最近ではcold tumorにも免疫を“呼び込む”ための戦略(放射線との併用、ウイルス療法、がんワクチンなど)も研究されており、“向いていない”状態も将来的には変わる可能性があります



「バイオマーカー」で効きやすさを予測できる時代に


近年、患者さんごとに免疫治療の反応を予測するバイオマーカー(指標)が多く登場しています。

指標

内容

反応予測との関係

PD-L1

がん細胞表面の免疫ブレーキタンパク質

高いほど反応しやすい

TMB(腫瘍変異量)

がんの遺伝子変異数

多いほど免疫が反応しやすい

MSI(マイクロサテライト不安定性)

DNA修復異常を持つがん

MSI-Hは奏効率が高い

腸内フローラ

善玉菌のバランス

特定の菌(Akkermansiaなど)が多いと反応性↑

このようなデータを活用し、「どの治療が自分に合うのか」を予測する“個別化医療”が今、がん治療の現場で始まっています。



医師と相談して「目的に合った治療」を選ぶ


免疫治療が向いているかどうかを判断するには、「今の目的は何か?」をはっきりさせることも大切です。


  • 腫瘍を小さくする(速効性)→ 抗がん剤や放射線(ただし副作用と耐性化が問題)

  • 腫瘍を小さくする(数か月かけて)→免疫細胞治療

  • 再発を防ぐ、長期的にがんをコントロールしたい → 免疫細胞治療や免疫チェックポイント阻害剤

  • QOLを維持しながら治療を続けたい → 副作用の少ない免疫治療


治療の選択は「一発勝負」ではなく、段階的な戦略の中で組み合わせていくものです。主治医との対話を通じて、自分に合ったステップを一緒に考えることが、がんとの向き合い方を柔軟にしてくれます。



まとめ:免疫治療の“向き・不向き”は見極められる


免疫治療は、誰にでも万能ではない一方で、「合う人には長く効く」可能性を秘めた治療法です。 向き・不向きを正しく判断し、「どの治療を」「どのタイミングで」使うかを考えることが、治療成功のカギとなります。


あなたの体、あなたのがん、あなたの生活。その全てに合った治療法は、きっと見つかります。


その選択肢の一つに、免疫治療という可能性があることを、忘れないでください。



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