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α-Galcer+WT1樹状細胞ワクチン療法

がん免疫療法において、免疫抑制を打破し、特異的な抗腫瘍免疫を強化することは、治療効果の向上に必要不可欠です。α-ガラクトシルセラミド (α-GalCer) 樹状細胞療法と WT1 樹状細胞ワクチン療法は、従来はそれぞれ単独の治療法として行われてきました。

当院ではこの両方の樹状細胞ワクチン療法を併用することで相乗効果を得られることを発見し、現在では両方のワクチンを同時併用しています。α-GalCer樹状細胞療法と WT1 樹状細胞ワクチン療法を併用することで、それぞれの特性を活かしながら相互補完的に作用し、より強力かつ持続的な抗腫瘍免疫を誘導できる可能性があります。

ここでは、その併用による相乗効果について詳しく説明いたします。

免疫システムの広範な活性化

α-GalCer 樹状細胞療法と WT1 樹状細胞ワクチン療法は、それぞれ異なる免疫メカニズムを介して作用するため、併用することでより広範な免疫応答を得ることができます。

α-GalCer は CD1d 分子を介してナチュラルキラーT (NKT) 細胞を強力に活性化し、IFN-γ や IL-12 などのサイトカインを放出させます。このサイトカイン環境は、ナチュラルキラー (NK) 細胞や細胞傷害性T細胞 (CTL) の活性化を促進し、免疫抑制的な腫瘍微小環境 (TME) を変化させる効果があります。

一方、WT1 樹状細胞ワクチン療法は、がん抗原である WT1 に対する特異的な CTL を誘導し、腫瘍細胞を選択的に攻撃します。

また、α-GalCer による NKT 細胞の活性化は、樹状細胞 (DC) の成熟を促し、WT1 ペプチドを提示する DC の抗原提示能を高める可能性があります。これにより、WT1 ワクチンの効果が増強され、WT1 に特異的な CTL の誘導がより効率的に行われると考えられます。

つまり、α-GalCer が免疫環境を整えることで、WT1 ワクチンが最大限の効果を発揮できるようになるのです。

樹状細胞とNKT細胞の作用

樹状細胞とNKT細胞は相互に作用しながら抗腫瘍免疫系を全体的に活性化します。NKT細胞の機能の中で、がんの増殖を促進するTreg、MDSC、腫瘍増殖性好中球の作用を阻害する働きは特に重要です。

腫瘍微小環境 (TME) のリモデリング

がんの進行には、腫瘍微小環境における免疫抑制が重要な役割を果たします。腫瘍組織内では、制御性T細胞 (Treg) や骨髄由来抑制細胞 (MDSC) などが免疫抑制的な環境を形成し、T細胞の活性化を阻害します。WT1 ワクチン単独では、この抑制的環境を完全に打破することが難しい場合があります。

α-GalCer は NKT 細胞を介して免疫賦活作用をもたらし、MDSC の抑制や Treg の減少を促します。また、IFN-γ の産生増加によって腫瘍組織内の MHC クラスI 分子の発現が上昇し、腫瘍細胞が T 細胞の攻撃を受けやすくなります。

さらに、α-GalCer による NK 細胞の活性化は、腫瘍血管を標的とすることで腫瘍の栄養供給を阻害し、免疫細胞の腫瘍浸潤を促進することが期待されます。

WT1 樹状細胞ワクチンが誘導する CTL の効果を最大化するためには、腫瘍組織へのT細胞浸潤が重要であり、この点でも α-GalCer の併用は有益と考えられます。

がん微小環境

悪性腫瘍の中にはMDSC、Tregなどのがん細胞の味方となってがんの増殖に働く様々な種類の細胞が混在しており、免疫細胞によるがん細胞への攻撃を困難にしています。NKT細胞はこの環境を破壊し、他の免疫細胞が攻撃しやすい状況を作ることに貢献します。

免疫記憶の強化と長期的な治療効果

がん免疫療法の理想的な目標の一つは、治療後も長期間にわたり免疫監視機構が働き、がんの再発を防ぐことです。WT1 ワクチンによる CTL 応答は、一度活性化されるとメモリーT細胞が形成され、長期的な抗腫瘍免疫を維持できます。しかし、免疫抑制環境が強い場合、メモリーT細胞の形成が阻害されることがあります。

α-GalCer による免疫環境の改善は、WT1 樹状細胞ワクチンの効果を長期にわたり維持することに寄与する可能性があります。NKT 細胞の活性化は DC の成熟を促進し、メモリーT細胞の維持に必要な共刺激シグナルを強化します。

α-GalCer による免疫環境の改善は、WT1 樹状細胞ワクチンの効果を長期にわたり維持することに寄与する可能性があります。NKT 細胞の活性化は DC の成熟を促進し、メモリーT細胞の維持に必要な共刺激シグナルを強化します。

また、α-GalCer によるサイトカイン環境の変化は、メモリーT細胞の分化や持続的な生存を支える要因となります。

この結果、WT1 ワクチン単独と比較して、より持続的な免疫記憶が確立され、再発予防効果が向上する可能性が高いと考えられます。

併用による治療の適応範囲の拡大

WT1 樹状細胞ワクチンは、WT1 を発現するがん細胞を標的とするため、WT1 陰性のがんには効果が限定される可能性があります。しかし、α-GalCer 樹状細胞療法は、WT1 に依存せずに NKT 細胞や NK 細胞を活性化し、広範な免疫応答を誘導します。

そのため、WT1 陰性のがん細胞に対しても一定の治療効果を期待できます。

特に、膵癌や肝細胞癌のように WT1 の発現が不均一であるがん種では、WT1 ワクチンと α-GalCer の併用によって、より多くのがん細胞を標的とできる可能性があります。

また、血液がん (急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群) においても、WT1 樹状細胞ワクチンによる特異的攻撃と、α-GalCer の免疫賦活作用を組み合わせることで、治療効果の向上が期待されます。

まとめ

α-GalCer 樹状細胞療法と WT1 樹状細胞ワクチン療法の併用は、免疫システムを多角的に活性化し、より強力かつ持続的な抗腫瘍免疫応答を誘導します。

α-GalCer による NKT/NK 細胞の活性化と免疫抑制環境の解除は、WT1 樹状細胞ワクチンの効果を増強し、より強固な CTL 応答を形成します。また、免疫記憶の強化や適応範囲の拡大といった点でも、併用の利点は大きいと考えられます。

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